高知県東部の中芸地域(奈半利町・田野町・安田町・北川村・馬路村)の5町村は、かつて林業で栄えた地域です。山間地区では林産、海岸地区では木材出荷を主な生業とし、銘木・やなせ杉を出荷していました。
やなせ杉の歴史は古く、京都の佛光寺大仏殿、二条城や江戸城などに御用木として納められたといわれています。太くて節がない淡紅色の高級材で、特有の香りを持つ、全国屈指の杉材です。藩政時代の土佐藩は朝廷奉納や幕府献上として重宝し、野中兼山らが『育てながら伐る』という思想のもと、御留山(藩有林)として厳しく管理したと伝えられます。
いまも、馬路村魚梁瀬の千本山には、樹齢200〜300年の天然杉の巨木たちが息づき、その風景は杉の日本三大美林のひとつに数えられています。大きな樹では、直径が約2m、高さは50mを超えるものも。平成12年4月には、千本山登山口の天然杉が、林野庁の『森の巨人たち100選』に選ばれました。
資料
魚梁瀬森林鉄道(RM LIBRARY(29))/舛本成行(著)・寺田正/出版:ネコパブリッシング
林鉄・寺田正写真集/寺田正/発行:寺田正写真集刊行会